2007年6月13日
東方神起は日本で11枚目のシングル『Lovin’ you』を発売した。
収録曲
・Lovin’ you
・五線紙
Lovin’ you
2018年6月下旬、「The Reunion in Memory」ツアー初日の横浜アリーナ――コンサートが中盤に差し掛かった頃、ジェジュンは東方神起の曲を歌い始め、観客をどよめかせた。この時メドレーで次々と歌ってみせた東方神起の曲の中に『Lovin’ you』があった。
『Lovin’ you』が発表されたのは2007年である。5人の曲だが、サビを全てジェジュンが担うゆえに、ジェジュンの歌声の印象がとりわけ強い曲だ。
2007年の春、「Five in the Black」ツアーを控えた東方神起はこの曲のレコーディングに取り掛かった。新曲の候補はいくつかあったが、その中でメンバー全員が選んだのが『Lovin’ you』だった(雑誌「月刊アピーリング」2007年5月24日発行より)。
この曲はメロディーだけ聴いてもすごく切ない感じがしたんですけど、歌詞を読んだらもっと切ない、さみしい気持ちが増して、レコーディングのときも自然と感情が入ってしまいました。(ジュンス)
雑誌「PATi PATi」2007年7月号
歌詞では“あの駅についたなら”とか“いつも待ち合わせしてた改札が近づくよ”とか、すごく具体的な場所が描かれているのに、曲は具体的な場所を思わせないオーラを感じるんですよね。(チャンミン)
でも、それもあって、より切なさが増しているような気がします。東方神起は今までも切ない曲が多かったんですけど、この曲は切なさ100%な曲だと思います!(ジェジュン)
雑誌「WHAT’s IN?」リリースインタビュー(『TOHOSHINKI Fantasy★Star 04-09』収録)
メンバーらが特に強調するのが、上記の引用にもあるように、ただ切ないだけではない、切ない感情の強さとその純度の高さである。そしてその歌詞のサビ全体、さらに歌い出しと歌い終わりを任されたのがジェジュンだった。
(レコーディングについて問われて)僕は大変でした。サビの部分の音が高いから、死ぬかと思いました(笑)
(中略)サビは、ブレスするところがあんまりありませんでしたから、とても大変ですけど、これからライヴなどで歌うのは自分でもとても楽しみにしています。(ジェジュン)
雑誌「ARENA37℃ SPECIAL」Vol.34 2007年
『Lovin’ you』のサビの音域は、ジェジュンの発声しやすい音域よりも高い。
「Begin」の音程は発声として出やすい音域なんです。でも、「Lovin’ you」はちょっと高いです(笑)
(中略)この声が好きなので、この声で高い音程まで出やすくなるように練習しないとダメだと思ってます。(ジェジュン)
雑誌「ARENA37℃ SPECIAL」Vol.34 2007年
ライブでジェジュンはこの曲をまるで泣き叫ぶかのように切々と歌い上げる。それは感情面だけでなく、喉に負担のかかる高音域に挑むという意味においても、文字通り身を削って歌っているといえそうだ。
五線紙
『Lovin’ you』とは対照的に、カップリングの『五線紙』は明るく希望に満ちた曲である。
とてもシンプルだし爽やかな印象の曲なので、「Lovin’ you」とは違った感じで歌うように心がけました。(ジェジュン)
雑誌「WHAT’s IN?」リリースインタビュー(『TOHOSHINKI Fantasy★Star 04-09』収録)
メンバーらが最初に聴いた段階ではシンプルなメロディだけだったが、ラップを入れたりコーラスを重ねることで東方神起らしく仕上げていったという。
「五線紙」を最初に聴いたときは、シンプルな印象があったのですが、ユノ(ユンホ)のラップやコーラスを入れてから遊び心あふれる曲になって。(ジェジュン)
雑誌「PATi PATi」2007年7月号
初のオリコン週間2位を獲得
『Lovin’ you』は、CDの発売に先立ち、5月10日から開始した「Five in the Black」ツアーのセトリに組み込まれる形で公開された。すなわち、当作のプロモーション活動は通常のメディアを通しての活動だけでなく、ライブツアー自体がそれを兼ねていた。
このようにライブツアーで先行公開してから発売日を迎えるパターンは『Begin』の先例がある。
デビュー2年目の『Begin』は、前作の2倍のセールスとなって、マネジメントが日本市場でやっていけるという手応えを初めて感じた曲。07年リリースの『Lovin’ you』は、それまで2万枚台だったセールスが、さらに2倍近く増え、オリコンチャートで自己最高の2位を獲得した。
雑誌「日経エンタテインメント!」2010年3月号
上記で引用した雑誌「日経エンタテインメント!」は、『Begin』『Lovin’ you』そして翌2008年のヒット曲『どうして君を好きになってしまったんだろう?』を、東方神起の転機となった“劇的バラード”として分析している。
何をグループの転機とするかは色々な見方があるだろう。しかし彼らが要所要所でJ-POPらしいバラードに挑戦し成果を上げてきたことは事実であり、『Lovin’ you』をそのような位置づけで捉えるとまた興味深い。
『Lovin’ you』がオリコン2位を獲得したという嬉しい知らせは、6月19日の武道館公演の本番前に飛び込んできたという。
「本当にびっくりしました。初めての2位で嬉しい。(ジュンス)」「恥ずかしいのですが、2位をとれたので、今度は1位を狙いたいです。(チャンミン)」といった言葉もさることながら、ライヴ後の打ち上げでのメンバーのテンションの高さ(特にジェジュンとジュンス)からも、この記録はよほど嬉しかったことに違いない(ちなみに余談だが、「BARKS+plus DANCE & VOCAL, HIPHOP」を担当した、現バークスモバイル担当“M兄ぃ”は、打ち上げの席で彼らに抱きつかれながら、ともに喜びを分かち合っていた)。
ライヴ!! 東方神起 in 日本武道館レポ(後編) | BARKS
両親の日、そして大切な人
『Lovin’ you』のプロモーション活動が行われた5月から6月にかけて、韓国では両親の日(5月8日)、日本では母の日と父の日があった。
韓国には母の日、父の日とは別に「両親の日」というのがあって、それが(この取材の)一昨日だったんですけど、電話して、たくさん話しました。(ジェジュン)
雑誌「ARENA37℃ SPECIAL」Vol.34 2007年
母の日と父の日にちなんで、東方神起は雑誌「WHAT’s IN?」の連載企画で、大切な人をイラストで紹介することとなった。
各自がスケッチブックとペンを使って描いたのは、ユンホは両親、チャンミンは自分自身、ユチョンは弟、ジュンスは双子の兄。
ジェジュンが描いたのは、いつも行動を共にするメンバーとマネージャーの姿だった。
メンバーとは両親よりも長い時間一緒にいるから、一緒にいることが当たり前になっているんですけど、僕にとっては今、いちばん大切な存在なんです。毎日一緒にいると大切さを見失うときもあるけど、休みの日に一日離れただけでも本当に寂しいって思うんです。(ジェジュン)
雑誌「WHAT’s IN?」2007年7月号
この頃のジェジュンは日記のようなノートを持ち歩き、仕事やプライベートなど、さまざまな人生の目標を書き留めていた。
東方神起としての目標で書いてることは、“どういう時にもメンバーを愛する”ということです。……これはメンバーにも話していないんですけど(笑)
(中略)やっぱり時々怒ったりもしますけど、メンバーがみんな同じ気持ちだと思います。たまに迷った時にはノートを見て、もう一回確認したりしてます。“愛そう!”って。これも大切です(笑)
雑誌「ARENA37℃ SPECIAL」Vol.34 2007年
上記のインタビューに限らず、ジェジュンのデビュー以来の言動を追うと、彼がいつも大切にしたい物事を深く見つめ、自分に言い聞かせ、常に忘れないよう胸に刻もうとする人物であることが伝わってくる。
『Lovin’ you』の頃に見せていたメンバーへの思いも、そのようなジェジュンの人間性の表れといえそうだ。
CD・DVD
CDのみのバージョンには『約束』のリミックスバージョンも収録されている。
『History in Japan Vol.3』にはジャケット写真撮影の映像が収録されている。撮影の合間に変顔でおどけるジェジュンはとても楽しそうだ。
雑誌
『Lovin’ you』の特集が組まれたこちらの雑誌は、撮影現場レポートや5人での集合インタビューに加えて、一人ひとりの個人インタビューもあり、充実した内容でおすすめだ。