2007年9月19日
東方神起は日本で13枚目のシングル『SHINE / Ride on』を発売した。
収録曲
・SHINE
・Ride on
SHINE
夏の勝負作『SUMMER〜Summer Dream/Song for you/Love in the Ice〜』を引っさげた怒涛のイベント活動がひと段落したタイミングでリリースされたのが『SHINE』である。
前作のリリースから約1カ月半という短いスパンで、世間的にも夏の気分が落ち着き始める時期。
J-POPらしい明るくアップテンポな曲を連続して発表し、東方神起は爽やかで大衆的なイメージを打ち出し続けることとなった。
そんな中で、『SHINE』で彼らが意識するのは季節感だ。
「SHINE」は暑い夏が終わって、涼しくなっていく秋の始まりにピッタリなナンバーで。(ユチョン)
雑誌「PATi PATi」2007年10月号
『Summer Dream』のような明るく弾む曲調なんだけど、秋にリリースすることもあって、(中略)線の細く柔らかい声で歌ったり、発声を通じて“秋らしさ”を求めていきました。(ジェジュン)
雑誌「MUSIQ?」Vol.9 2007年
この曲を知っている読者であれば、メンバーらが口々に秋を語ることを少し不思議に感じるかもしれない。
なぜなら歌詞の中に”秋”または秋を強く想起させる言葉は一つも入っていないからだ。
『SHINE』は、純粋な男の人の心を表現している歌だと思います。
(中略)純粋な気持ちは絶対必要なことだし、そういう素直な感情は、とても大切なこと。だから僕自身は、大切だと思える人へ向け、ありのままの気持ちをまっすぐ伝えるように歌いました。(ジェジュン)
雑誌「MUSIQ?」Vol.9 2007年
『SHINE』の歌詞は、大切な相手に対する気持ちが単純とも思えるほど明るく素直な言葉で綴られているのだが、秋を直接歌っているわけではない。
このことは東方神起による秋の表現が、言葉の意味を伝える以外の方法で試みられていることを意味する。
それでは東方神起は歌詞と伝えたいイメージをどのように融合させたのだろうか。
コンセプトとして彼らが着目したのは、単なる恋愛感情にとどまらないという点だった。
前のシングル(Summer Dream)は明るい曲でしたけど、今回も明るい感じの曲じゃないですか。でも歌詞の内容がもっと大きな愛をテーマにしていて、ホント秋に似合う曲だと思います。
(中略)「SHINE」を歌うときは明るい曲なんだけど、大きな愛を込めてちょっと大人っぽく歌ったつもり。(ユンホ)
雑誌「NEWSMAKER」2007年11月号
愛を告白するだけの恋愛ソングという枠には収まらない曲ですね。まわりで僕を支えている家族や友人などに感謝する愛も込められていると思います。(チャンミン)
雑誌「CDでーた」2007年10月号
全体的にはPUREなイメージを受けました。大人の男というよりは、少年のイメージですね。(ユチョン)
『SHINE』に対する解釈には、メンバーそれぞれの性格や個性が強く滲む。
ジェジュンはというと、あくまでも恋愛シーンを想定しつつ、純粋な気持ちを真っ直ぐに伝えるというアプローチをしたようだ。
ホント、これはストレートな歌詞なんで、好きな人にも直接は言えないような言葉を歌で伝えるような気持ちで歌いました。
例えるなら、彼女の前では恥ずかしいから歌で思いっきり行っちゃう感じ(照)。(ジェジュン)
雑誌「NEWSMAKER」2007年11月号
僕は好きな人の前で“ありのままの僕でいられる”主人公がうらやましいです。恥ずかしくて僕は好きな相手に対して正直に気持ちをさらけ出すことはできないので。(ジェジュン)
雑誌「WHAT’s IN?」リリースインタビュー(『TOHOSHINKI Fantasy★Star 04-09』収録)
大きな愛を語る時になぜか照れた様子のジェジュン。彼からしてみれば随分と思い切った言葉たちなのだろうか。
『SHINE』を歌うジェジュンの歌声はナチュラルで柔らかい響きが印象的だ。歌でならありのままに伝えられる、そんな自然体こそがジェジュンにとっての秋なのかもしれない。
Ride on
明るいJ-POPの『SHINE』とは対照的に、『Ride on』は洋楽のリズムとダンサブルな雰囲気を持つ曲。
歌詞の大半は英語で占められ、合間合間にフックのように日本語が入り混じる。
これまでトライしていないジャンルですね。洋楽色が強い曲。でも、最初に聴いた時は、僕らに似合う曲だ!とも思いました。(ユンホ)
男が持つ迫力とか、色気を感じることができる曲だと思います。(チャンミン)
雑誌「CDでーた」2007年10月号
『Ride on』のリズムは終始一定に刻まれる。メロディーも単調な繰り返しであり、ダイナミックな動きはあまりない。
それゆえ、大人の男性らしい雰囲気重視の曲に味付けをすべく、メンバーらはアレンジにじっくりと取り組んだ。
『Ride on』はコンセプトがなかったのでホントに自由にフリースタイルでやったんですよ。ちょっとアメリカンポップな気がしたので、フェイクも自分で考えて入れたり、そういうことをしてるんです。(ユンホ)
雑誌「NEWSMAKER」2007年11月号
これはホントあまり決めごとをしないで、フリーな感じで。
メロディがあるラインでそういうふうにやるのは今まであんまりなかったから楽しかったです。自分たちが直接曲作る感じがあって、5人で相談し合ったりアドバイスし合ったり。(ユチョン)
雑誌「NEWSMAKER」2007年11月号
メンバーらは練習に多くの時間を割き、自分たちのアイデアや意見をかなり反映させてレコーディングを行ったという。
すごく難しかったです。『SHINE』はいつもより発声を抑え気味にして柔らかく歌ったんですが、『Ride on』は対照的に力強く、太い声を意識して歌いました。(ジェジュン)
雑誌「PATi PATi」2007年10月号
最後に出てくる、僕のフェイク。そこはポイントですね(笑)(ジェジュン)
雑誌「CDでーた」2007年10月号
ジェジュンだけでなく他のメンバーも、自分たちで考えてフェイクやファルセットを多く入れたとのこと。
そんな東方神起のクリエイティビティが『Ride on』の聴きどころといえる。
洞窟でのPV撮影
『SHINE』のイメージに入り混じる落ち着きや純粋さ、そして秋の気配などの世界観を楽しむためには、とりわけPVに注目してほしいとメンバーらは語る。
僕たちはブラックスーツを着て洞窟の中のような、わりと暗いところでダンスをしています。そこの雰囲気はとても大人っぽい、カッコイイ感じになっています。(ジュンス)
雑誌「月刊アピーリング」2007年9月21日発行
そして、歌詞にもこめられた明るさと純粋さの象徴が、白い衣服に身を包んだ女の子だ。
彼女がアイコンになっているというか、キーポイントです(笑)。(ジュンス)
その女の子がいなかったら、この世界観は全然違うものになっていました。彼女がいることで、僕らの雰囲気と優しい感じの歌詞がもっとよく伝わると思います。(チャンミン)
雑誌「月刊アピーリング」2007年9月21日発行
PV撮影は栃木県の大谷石地下採掘場跡で行われた。この場所はかつて石を掘り出していたため、洞窟のような巨大な地下空間が広がっている。
採石場で撮ったんですけど、一番暑かった時期だったのに、本っ当に寒かったですね、その洞窟の中は。(ジュンス)
DVD『History in Japan Vol.3』
撮影現場に着くなりメンバーが薄着のまま洞窟に入って行きましたが、「寒いです!?」「無理です!?」と言いながらすぐに戻って来ました。(中略)そして、あまりの寒さにカップラーメンを分け合っている姿は微笑ましかったです。
Bigeast会報 Vol.6
この日、外の気温は35℃近かったにも関わらず、洞窟内は真冬並みの寒さだった。
PV撮影時のオフショット映像を見ると、話しているジェジュンの息が白くなっているほどだ。
メンバーらは昼前に現場に到着し、ソロのダンス、リップシンク、5人でのダンスの順に撮影を進行。翌日の明け方までかけて完了したという。
ジャケット撮影
ジャケット撮影が行われたのは8月初旬。この日、撮影現場にはビッグニュースが飛び込んできた。
発売したばかりの『SUMMER〜Summer Dream/Song for you/Love in the Ice〜』が、オリコンのデイリーチャートで初めて1位をとったのだ。
デイリーチャート1位になったので、ずーっと笑いながら撮りました(照)。我慢できなかったです(笑)。(ユンホ)
ほんとに嬉しくて、ジャケットのコンセプトはちょっとクールな、そういう感じでお願いしますってカメラマンさんに言われたんですけど、出来なかったんですね。(チャンミン)
5人みんな笑いながら。(ユチョン)
(ジャケット写真の)顔をちゃんと見れば、ちょっとニコッとしてます。(チャンミン)
JFN(ラジオ)「Bigeastation」2007年9月24日放送
撮影現場でスタッフに1位を告げられると、メンバーたちは抱き合って小躍り。
撮影中は秋らしく落ち着いた大人びた姿を見せなければならないのに、嬉しさが隠しきれなかったようだ。
楽しい雰囲気は待ち時間にも続いていた。
やけに歓声があがるのでメンバー部屋を覗いてみたらなんと、ジェジュンとチャンミンがゲームで盛り上がっていてユンホとユチョンは仲良く寝そべりながらDVD鑑賞です。本当に仲がいいですね。
Bigeast会報 Vol.6
第三者的にはゲームをしていて撮影が大丈夫なのか心配になるところだが、Bigeastの会報によれば、実際は順調に進み首尾よく終わったそうだ。
歌声の使い分け
『SHINE/Ride on』のレコーディングに話を戻そう。
当時のジェジュンのインタビューを追うと、彼が曲によって発声を変えていることが分かる。
例えば「Lovin’ you」は細い声で、「Ride on」はけっこう太い感じ。「Summer Dream」はその間だったと思います。
こういうタイプの曲は太く歌いたいとか、曲の感じに合わせて細く歌いたいとか、ひとつずつ考えて歌うことが大事だと思うので、その雰囲気を捉えながら歌うようにしました。(ジェジュン)
雑誌「AREANA37℃」2007年10月号
ジェジュンが自身の歌声の変化について言及し始めたのは2007年の半ば頃からである。
僕の声の個性って、(以前は)そんなになかったんですけど、日本に来てから自分の声ってこんな声だったんだって、個性が発見できたんですよ。(ジェジュン)
雑誌「B-PASS」2007年11月号
「Begin」を歌うようになって、この高い声の歌い方が始まったんです。この曲を歌ったことで、“あ~この声か”っていうことがわかるようになりました。(ジェジュン)
雑誌「ARENA37℃ SPECIAL」Vol.34 2007年
ジェジュンは2006年の『Begin』をきっかけに見出した発声方法を、他の曲にも応用することで磨き上げてきた。
ただし、こうした歌い方や声についての彼自身の説明は、2007年6月の『Lovin’ you』の時点ではいくぶん感覚的で漠然としていた印象がある。
それから約3カ月後の『SHINE/Ride on』の頃になると、ジェジュンはより明確な言葉で自身の歌声を語るようになっていた。
それだけでなく『Lovin’ you』は細い声、『Ride on』は太い声、『Summer Dream』は中間の声というように、少なくとも3種類もの使い分けについて明かしているのだ。
グループの多彩性を支える
もちろんジェジュンの説明はあくまで一般人に分かりやすく伝えているのであって、発声とは本来的には明確に種類分けできるものではないだろう。
しかし実際に、2007年半ば頃には彼の歌声のトーンは曲ごとによりはっきりと違いを見せていた。
ジェジュンの声は、東方神起の全体の雰囲気を担当していますからね。韓国で出した1枚目の作品から比べるとジェジュンの声は本当に変わった。今の方が柔らかいし、“Lovin’ you”とか“Begin”とかバラード曲では、ジェジュンの落ち着いた柔らかい声があるからあの雰囲気が出る。声だけで癒される。
でもダンス曲やロックを歌うときはまた変わるんですよね。物真似が特技なので、そのぶんいろんな声を持ってます。きっとジェジュンの声がなければ、この東方神起の雰囲気にはならない。(ユンホ)
雑誌「B-PASS」2007年11月号
ユンホの言葉は、ジェジュンの歌声がグループの表現に与える役割の大きさを示している。
このような個性を磨くにあたって、ジェジュン自身はどのように向き合っていたのか。
2007年の取り組みを振り返った彼のインタビューを見てみよう。
僕は自分のことに対してすごく反省することがたくさんあった1年でした……
(中略)個人的に、僕のヴォーカルに対して、どういう風にしたら自然に発声しやすいのか、どう発声したら、聴く人たちがもっと“いい声だな”って思ってくれるか、それを一人で考えたりすることが多かったですね。(ジェジュン)
雑誌「B-PASS」2008年2月号
その後も年月をかけてジェジュンの歌声は多彩化を続けた。
15年後の2022年現在では、ジェジュンの歌声を七色の歌声と称賛するファンもいる。
デビュー曲『HUG』の頃の歌声が一色だったとすると、『SHINE/Ride on』の頃は幾つの色の声があったのだろうか。そんな彼の進化の過程が想起される。
CD・DVD
CDのみのバージョンには、タイトル曲の他に『Lovin’ you』のリミックスバージョンも収録されている。
DVD付きのバージョンはPVが収録されている。
『History in Japan Vol.3』ではPV撮影時をメンバーらが振り返っている。
雑誌
MUSIQ?は記事だけでなく付属DVDに東方神起の映像が入っている。東方神起への熱い賛辞が書かれた編集後記も必見。
月刊アピーリングのインタビューはPV撮影について。また、東方神起が出演したa-nation’07のライブレポートも収録されている。
AREANA37℃は各メンバーの内面に深く迫る個人インタビューが必見。グラビアも美しい。
『SHINE/Ride on』の楽曲解説はNEWSMAKERが最も詳しく踏み込んだ視点で書かれている。曲を深堀りするのにおすすめだ。
CDでーたは栃木のPV撮影に密着取材。撮影現場の写真が多数掲載されている点がおすすめ。
PATi PATiは『SHINE/Ride on』の掲載ももちろんだが、それよりもゴスペラーズのページでSOUL POWER Summitのライブレポートが掲載されている点に注目したい。ライブの盛り上がり、そしてゴスペラーズと東方神起の熱い交流が伝わる内容だ。
B-PASSは5人の声に焦点を絞ったインタビューを掲載。音楽への深い理解に基づきアーティストの核心に迫るB-PASSらしい内容である。
2007年はジェジュンの歌がそこから大きく展開される分岐点だったのですね!
15年かけて7色ボイスと賞賛されるまで
ジェジュンは繊細に探りながら反省もしながら 歌声の高みを目指していたんだな…
これだけの資料を集めて読んでもらい まとめてもらったいい所取りで読める幸せをありがとうぽけぽけさん
こちらこそいつもコメントありがとうございます♪ 資料は調べればいくらでもあるんです…そこにジェジュンの足跡が残されていると思うと、嬉しくて紹介したくなりますよ(*^^*)